NHKの「所さん!大変ですよ」で、「遺人形」という人形が紹介されてから、遺人形についてのお問い合わせが増えました。
そこで、遺人形について少しお話したいと思います。
そもそも「遺人形」とは何なのか??
実は私も番組で取り上げるまで「遺人形」という言葉を、恥ずかしながら全く聞いたことがありませんでした。
ようするに、亡くなった方のお写真を飾るのは「遺影」。
これは皆様おなじみですね。
それに対して、亡くなった方に似せた人形を飾る(遺す)のを「遺人形」という括りでした。
(「遺フィギュア」と呼ぶ場合もあるみたいです。)
「遺人形」という名前がかなりインパクトのある、ちょと衝撃的なネーミングなので、視聴者の皆さんは驚いたでしょうね。
私にとっても、この呼び方はインパクトがありました。
ただ、「亡くなった方に似せて人形(そっくり人形)を作る」というご依頼自体は昔からよくあることなので、3Dプリンターで制作すること以外は、特に目新しくは感じませんでした。
では、どんな時に、どんなご依頼があるのでしょうか?
●一番多いのはおそらく、遺人形としてご注文したものではなく、生前に「そっくり人形」としてお作り頂いたものが、その後お亡くなりになって「遺人形」として改めて飾って頂くという事例だと思います。
その後、隣に飾りたいからと、ご自分の人形を依頼されて、「夫婦で並べてるよ」なんてメールを頂くこともあります。
●亡くなって間もなく、ご遺族からご依頼頂く。
こういった例では、お話を伺っているうちに、こちらも涙が出そうになります。
ご年配の方はもちろんですが、お子様の場合には特にそうです。
最近は、ネットやスマホの普及もあって、お電話ではなくメールでやり取りする事も多くなりましたが、メールの行間からでも深い悲しみが伝わってきて、私にとっても辛いお仕事になることが多いです。
●亡くなって、しばらく経ってからご依頼頂く。
数年経っているので、悲しみはありながらも、落ち着いて色々なことを思い出し、「どのような人形にしようかな~??」と、楽しみながら考えているお客様が多いです。
お客様と思い出話を交えながら、釣りが趣味だったので~とか、登山が好きで~、などなど、どのような人形にするの会話の中から探していく事も良くあります。
●飾る場所は、仏壇や居間、大好きだったピアノの上、TVまわり(以前はTVの上に飾れましたが、最近はテレビが薄いの上には飾れませんね)。
意外だったのは、その時によって「仏壇だったり、テーブルだったり寝室だったりと持ち運びたい」というお客様が多く、「いつも話しかけているんだよ」っと・・・、生活の一部に人形が溶け込んでるんだな~と嬉しく思ったりもします。
このお仕事は、人生の節目でご依頼を頂くことが殆どです。
そっくり人形は(初節句~七五三~ご入学~ご卒業~結婚~退職~還暦~金婚式~遺人形など)と、生まれてから亡くなるまで、まさに人生とともにあります。
どんな場合でも、当店の「そっくり人形」を気に入って頂き、ご注文頂けるという事は大変うれしい事です。
しかしながら、遺人形を作るという事は、誰かの大切なご家族が亡くなった事を意味するので、正直「遺人形のご注文きてほしいな~」とは無邪気に(単純に?)は考えられません。
しかしそれでも、先日のTVでも言っていた、「そっくり人形(遺人形)には遺族の心を癒す力がある」としたならば、「やはり全力で取り込みたい、取り込むべきもの」だと思います。
医者でもカウンセラーでも何でもない、ただの「人形職人」が、人形を通して、「人の心を癒し、少しでも前向きになってもらえるとしたら・・・」、こんなやりがいはありませんから。